otsu/kinoto

基本性格
低く 柔らかく 群生する陰の木性
自然界では草花のこと
守る・外柔内剛・融和の心
表では人を迎合するが
地下には強固な根が張っている
和のなかで自我を実現する



季節観

12年で一巡する今年の乙の活力は、富士山でいう七合目あたり。体力も気力も上にむかっていて「よっしゃいくぞ!」というバイタリティに満ちている。七合目から八合目にかけては突然の雨に見舞われることが多い地帯でありながら、これからという時でもあり「なにくそ!」と勢いにまかせてしまう者多し。今年の十二支〈辰〉は春の土用のことで、乙(草花)にとっては発展の時期。水の気に包まれていた過去2年の濁流や好雨をすっきり濾過し、今やみずみずしいエネルギーが巡り始めている。



❦ 占 ❦


芽吹きと栄え

乙 は柔らかく背の低い全ての植物のことで、その乙がことし 辰 という季節の中にある。タラの芽、よもぎ、うど、わらび、アイヌネギ… 香り高く 苦味 旨み が充実した植物たちがブワッと一斉に旬を迎える。シンプルにいうと2024年は乙にとって守りの年である。ここでいう守るとは停止のことではない。守るとは keep のことであり、飛行機は停止すれば落下するが keep している状態では変わりなく上空を飛行している。守りは必ずしも「楽」ではなく絶え間ない努力がつきものだったりする。

今年の乙が何を守りたいかというと、自分なりのやり方だったり、思想・哲学なのだと思う。特に2022年頃からの経験によって生まれた新しいやり方や ものの見方。あなたは何を学び経験してきたのだろう。孤独な責務をまっとうするため書物を紐解き、改善の余地があれば慎重にテコ入れをしてきた。旅先にて、何か、現実で活用できそうな発見をした者もいるだろう。これが自己流や自己哲学の若根である。この根のエネルギーをもって「外の世界と擦り合わせていく」という芽吹きのプロセスが今年であり、擦り合わせるなかで「怒り」あるいは「問い」があなたの内側に生じる。

乙、は自然界の草花が土より上では柔らかく 下では頑強であるように、本来が内剛外柔の守りの質をもっている。この時期は守りというエネルギーがさらに強調されている。内側を「守ろう」とするならば、外側に「攻めの姿勢」がでてくる。攻撃といっても他者を直に傷つけるものではなしに、あなたの場合はおそらく「愚直に、まっすぐ進んでいく」「仲間を募る」という攻めのスタイルをとる。今年のあなたはまともすぎる。純で若々しく愚直。壁にぶちあたっても退くことはなく、争いを(できる限り) 巧妙に避けてひたすら進んでいくのだと思う。


民衆を導く乙たる女神

2024年のあなたは「さまざまなタイプの考え」をゴクンと一飲みにしながらも信念を真っ直ぐに貫いていく。たとえば集団競技を極めようとする中で自分のポジションを含めチーム全体はこういうプレーをすれば生かされるという信念が内にあるのに、いざ試合となると、自分とは異なる考えによって動く仲間もいる。勝利する、という目的は同じにも関わらず。自己を押し通そうとするほど外に対して摩擦を感じ、怒りや問い、が生じる。「周囲」とはリアルに近い仲かもしれないし、立場が上の人、もっともっと大きく捉えると社会や国家ともいえる。この時期は屋根をも突き破らんとする前へ!前へ!のエネルギーがある。障害物を克服しようとするとき、過去のあなたが習得した新しいものの見方を通して「こう想う」という自覚に何度も何度も研磨がかかり、あなたのバックボーンとして定着する。

あるいは信念の持ち主は間違いなく「わたし」なんだけれど実現には数が必要ということもある。自分を含む集団を守るために率先して立ち上がる過程で何か、よりクリアに目指すところに気がつくのかもしれない。ことしは平たく言うと「人々と接する」年でもあり、それも、かなり積極的に「同志」を募っていく。志が同じであれば人柄や経歴は問わない。なんというか「君のその考え、好きです。仲間になりませんか?」とストレートに誘っていく。周囲の人間と接するにあたり、素直すぎる面がでてきやすく、価値観が合うというだけで歓喜し、価値観が合わないというだけで人に怒りの感情が生まれやすい。おもしろいことに、考え方が異なる人に出会うことによって、自分の思想のカラー、立ち位置、というものが浮き彫りになり強化される。

勢いがついたあなたは、この想いを周囲に表明していくかもしれない。乙にとって表明とはお日さまの光だ。雨滴る草花も趣があるが、日の光はあなたの生命活動を盛んにする。表明・表現するにあたり想いをより多くの人に理解してもらうためには多少「アク抜き」をする必要があるかもしれない。なんせ今年の乙は凄まじく振い(ふるい)立っていて生のままだと辛辣すぎる。あなたが置かれている立場やこれまでの文脈によって、その辛辣さが一種の「魅力」として映ることもあるけれども。より多くの同意を得るには言葉遣いは適切かな?誤解を招く表現はないかな?と丹念に仕立てることだ。そうしたあなたの表現は明るく温かい。内容が独特であろうと、なんかこうさっぱりしていて、人を不快にさせないだろうから。


仕事・社会活動

乙は、人柄も処世も柔軟に見える方が多いことから、事情を知らない者が気軽に仕事を振ってきたり場を荒らしにくることも多い。今年はなんでもかんでも引き受けるより「予約でいっぱいです。」と断ち切るとこは断ち切って活動を1本に仕立てるとか、「メインで育てていく幹たる仕事。その他の枝葉たる仕事。」と力の注ぎどころを明確に分けたほうがよい。この時期は同時進行よりも、志高くひとつのプロジェクトに向かっていくことで甲辰という旬から得られる真っ直ぐな推進力を活かせる。人によっては普段より際立つことになるので、白羽の矢が立つこともあるかと思う。リーダー的な立場もいいっちゃいいが、進むを知って退くを知らない推進の時期なので、他者、特に友人や同僚といった横の人々の物の見方が時にあなたに気づきをもたらす。行き詰まったり、あーどっちにしよう、なんて悩んだときは 多くの者「たち」の意見をとりあえず聞いてみたり、多数決という手も活用する。


人との関わり

率直に、他者と場を共有することが楽しい年で、親しい人がさらに人を呼び、脈々と相関図が広がりをみせる。一方、目指す方向は同じにして共有できない感情の温度差があるために、人の和にいてあなたはどこか「単独」であると感じるかもしれない。物理的孤立でなくて調和の中での単独だ。この時期のあなたは自分なりの仮説に固執しがちだが、他者に耳を傾ける・自分の意見を(固まっていなくても)言葉や芸術にする、というマメで活発なコミュニケーションによって凝り固まることを回避する。それは「対談」というより「ディスカッション(討論)」で、精神的にピリとするものかもしれないけれど、却って、他者と自分を活かすことになる。また、家庭と仕事(外向きの活動)という天秤があるのなら、ことしは外向きの活動、にグーっと傾く。家庭や内省といった「内のこと」が疎かになるかもしれない。乙のご家族がこの文章をチェックしているのならどうか大目にみてほしい。彼らのエネルギーは今や「外」に発揮されていて、それゆえに全体のバランスを担っているのだから。