今夜、うまれてはじめて家族が作った とりの唐揚げ を食べる。
わたしの母は、生きている鳥も食品の鶏も苦手で 家庭で鶏肉料理が出たことは一切ない。
だから「とりの唐揚げ」をはじめて自宅で食べたのは、一人暮らしの自炊だった。
昨年より病の治療をしている母が2ヶ月ぶりに退院できることが昨日決まり、私は先ほど実家に帰ってきた。
東海道新幹線から覗く 小田原〜熱海間 では、お日さまの子どもみたいなミカンと雪の組み合わせが流れていった。私の故郷である静岡県東部の平地では、雪は幻のようなものだ。
だから私は、幻を追って奥信州に引っ越してきた。
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父から「夕飯を作っておきます」とメッセージがきた。

母が急遽入院することになって2カ月間、ひとりで生活を営んでいた父である。
「唐揚げがいいです。」
そう返信した。
特に、好物ではないのに 1番に思い浮かんだものが唐揚げ。
直感に従おうと思った。
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駅からタクシーで家に着き、
寒い家の中を なにをするでもなく いろんな部屋に入ったり出たり、箪笥を開いたり閉じたりした。
父がひとりで暮らしていた2ヶ月分の大きな家に、おそるおそる。
台所に 唐揚げ の計画表があった。
父は入念な人だ。
私が万が一 友人にいじめられた時に備え、夏休みの理科の自由研究のコピーをとるくらい入念だ。
きょうも、娘が突然帰ってくることになって 急いで入念に「平常の家」に戻したに違いない。
料理も上手だ。
浪人時代の弁当は父がつくってくれた。

部屋を意味なく回遊し、ようやく気持ちが現実に戻り、
こたつに火をつけて読書をしたり うつらうつらしていると父が帰宅。
こたつに潜って、まな板の音と ごま油らしき香りを感じながら こうやってブログを書いている。
はじめて 家庭人が作った唐揚げを食べる。
それを伝えたくてブログを書いている。
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