この休暇中、とてもいいものに出会った。
祖母の家の近くに、自然食品の店があって、そこで手に取った商品は
キルギス共和国の原生林で採集された《キリチバダム》という野生のアーモンドだ。
ふだんナッツは好んで食べないけど、アーモンドを収穫している現地民がイラストで描かれている可愛らしいパッケージと、「キルギス」「野生」というパワーワードに惹かれてカゴに入れた。630円だった。
キルギスは中央アジアの国。中国と地中海を結ぶ、シルクロード沿いの国である。
わたしは前職でキリル文字をリサーチをしているうちにキルギスを含む中央アジアはとても気になる存在になっていた。Google Earth でバーチャル旅行をしていたもんだ。
このアーモンド、僕らにおなじみのアメリカ産によくあるプリっとしたアーモンドと違う。
カタチは殻も実も細長くドラゴンの爪みたい。
結構堅い。素手で割れるものと、石か何かで叩かないと割れないものが半々といったところ。
種子は、ひとつの殻に対し一粒のものもあれば双子のものもあった。
味は、苦労して取り出したその味は、滋味。…滋味としかいいようがない。
滋味: 豊かで深い精神的な味わい。
goo 国語辞書 より
そう、精神的な甘い味わいがする。校庭のジャングルジムから手を伸ばして収穫した桑の実とか、がくを取って吸うツツジの蜜とか。
農作物として人の舌を満足させる目的とは別の植物都合な風味を含む味。
収穫したのは現地の人だけど、堅い殻を剥いて辿り着いたのは、そういう味だった。
登山のときの行動食で食べたら最高だろうな。
野生のアーモンドのほとんどはアミグダリンという青酸カリに分解する性質をもつ物質が含まれるという内容が、今読んでいる本に偶然かいてあった。
アーモンドはバラ科だ。
社会人になって初めて青梅の甘露煮をつくったとき、青梅について調べていた。そのときバラ科の植物の未成熟の種子には毒性が含まれるということを知った。
桃、梅、杏、琵琶 そしてアーモンド etc…
テーブルの上の野生アーモンド《キリチバダム》を眺める。
うーむ、輸入されてこのように手元に届けられるということは、成分的に合格しているはずだ。それに、自分の体調に異変はない。
なのに、この原種がなぜ大丈夫であるのか、知りたい。
《キリチバダム》と検索しても詳しいことは掴めず。
毒性への不安というより、キリチバダムの生態への好奇心でメーカーに質問のメールを送った。
わたしのメールに対し、担当者の方はとても丁寧に返答してくださった。
それにパッケージにいた現地民とキルギスの可愛いイラストつきのバイヤー向けの資料までいただいた。
- 毒性があるものは野生のアーモンドのビター種であり、キルギスの野生アーモンドは無毒のスイート種
- 厚生労働省の輸入許可審査に合格している
- 現地では数千年前から食されている歴史がある
ということだ。
わたしは、このアーモンドがますます好きになった。
そして中央アジアにもっと興味が湧いた。
おととい自宅に帰ってきたけれど、こちらでは成城石井とかに売っているだろうか?