MacBook が修理センターから新品同様の姿で戻ってきた。イカれていた3つのキーだけでなく、キーボード全体が一新されて戻ってきた。全体的にタイピングしている感覚が全然違くて、以前が麻だとしたら今は絹。つっかかりもノイズもなく、マットなピアノを叩いているよう。2016年MacBook Pro には よくある不具合なので修理費は無料。わたしはメカ方面は弱いので、報告書に書かれていた技師さんの名前をみて、その仕事を心からリスペクトした。
「ゴールデンカムイと算命学にみる神の窓口論」では、アイヌ信仰と算命学のアニミズム的な共通点を書いた。
ゴールデンカムイは集英社のヤングジャンプに連載中。日露戦争直後の北海道と樺太を舞台にしたサバイバル漫画。徴兵を満期除隊した和人(日本人)「杉元佐一」と北海道アイヌの女の子「アシリパ」の出会いから本筋が始まり、アイヌが残した莫大な金塊を巡るストーリー。金塊を狙うのはこの二人だけでなく各々の目的をもったツワモノたちがこの金塊を狙って肉体と頭脳で争う。グロテスクな戦闘だけでなく、明治末期の雰囲気とか、当時の武器とか、狩猟とか、登場人物は実在のモデルがいることだとか、アイヌの民俗や料理が豊富に登場するのが魅力。
金カムと算命学を知っているからと、好きなモノ同士を無理やり仲良しさせたわけではない。もう読んでて自動的に「うわああああああああああ」となるんである。
今回のゴールデンカムイと算命学の話は、
アシリパ一行の旅順と、方向理論を掛け合わせた考察。
北海道編 (東西/肉体線 現在地から未来へ)
この漫画の物語の始まりはアシリパさんが住む小樽から。
そして目的地は網走。
なぜ網走か?
網走監獄にはアイヌを殺害し金塊を奪い、隠し場所を示す暗号を作成した重要人物「のっぺらぼう」が収監されている。
その網走監獄を目指して、
杉元とアシリパ+旅先で加わる仲間らと、小樽から網走に向かう。
これ一直線に網走に向かうのではなく地図上に小さな点で示した、日高や夕張、釧路などにも寄りつつ網走に向かっている。
113話を読んで、ハッとした話。
(ネタバレ気になる方は、そっと閉じてください)
網走監獄へ潜入間近になった釧路での夜。
小樽からアシリパを追ってきた男、谷垣から
小樽の村でアシリパを待つフチ(祖母)の現状を聞かされる。
アイヌの古い考えを重んじからこそ夢占いを信じるフチは
孫娘に二度と会えないという夢をみて生気をなくしている。
(自分の死を感じて死装束までつくっている…。)
そんな話を聞いて アシリパ曰く、
フチは実際に自分の娘(アシリパの母)が亡くなる前に、娘が熊に「送られている」夢をみているのだ。
だから、なおさら夢を信じるのだ、と。
そんな話を聞いて杉元
「一度帰ろうか?」と案じる。
するとアシリパ
子供扱いするな杉本!! 私にはどうしても知りたいことがある。
ゴールデンカムイ 113話 / 野田サトル / 集英社
知るべきことを知って自分の未来の為に前に進むんだ!!
と、ド真剣な顔で きり返す。
うわああああああああああああ
そうだったんだ!
ずっとずっと
「アシリパは現実未来(東方)にむかっていたのだ」
小樽から東方の網走へ!
算命学では上のような東西南北中央の図を理論そのものとして、よう使うのだけど
南北で結ぶ線は精神線、東西で結ぶ線は肉体線 と区別されているんである。
精神線は精神世界であり無形。肉体線は現実世界であり有形。
時間は西から東へ流れる。
東方は「現実の未来」の位置である。現実の未来は網走ということだ。
小樽から網走へ向かってきたアシリパ。
小樽というかつて自分の位置(中央)であった土地は、現在のアシリパにはいまや西方の「現実の過去」になってしまった。
フチを想って、小樽へ帰るということは過去へ向かうということ。
そんなん、アシリパに似合わないと私は (…..きっと杉元も) 思う。
だって杉元、アシリパからさっきの言葉を聞いて、とても良い顔してた。
アシリパさんはそうでなくちゃ、というツバを飲み込んだような顔。
だってアシリパは 新しい時代のアイヌの女 だもの。
アシリパとはアイヌ語で「未来」「新年」という意味。
アイヌの新しい時代を切り開く女性であれ、と彼女のお父さんが名付けたんだ。
(戸籍上の和名は小蝶辺 明日子。これまたマッチした漢字を使う。)
こどもから大人になるにつれて、
世話になった おばあちゃん おじいちゃん、両親、しきたり は煩わしくなる。
エキサイティングで真っ白な新しい世界に突入し、古い世界はもはやどうでもよくなる。
改良改革の気質が強い人物なら尚更。
進んでいる真っ最中に、彼らから引き留めに合うこともよくある。
そんなときは本当に煩わしく感じて嫌いにすらなりそうだ。
同時に、そんなことを思っている自分に寂しさを感じる。
過去を大切に想っていても、
それはそれとして
自分の肉体はだけは、せめて、前に進まないと。