冷と熱


煮物は 冷と熱の反復により
味がしっかり染みてくる

グツグツ鍋の中で踊っている時には
食材のエネルギーは外へ向かう

こちらの気分としては火を使いつづけている方が
調理している感じはあるんだけれど

食材は自身のエネルギーを発散することにいとまがない


子(水)が午(火)へ 発展するように
火は 生命の精を外へ外へ 誘引する


火を止めて 台所の照明を落とす


こちらは珈琲でもいれて
本のつづきを読むことにしよう


この沈静こそが 深みをあたえる


外へむかっていた食材の気は
味付けとともに内へ収斂する

食材が老成するような感じ


また温めて 提供してもいいし
冬のおでんは何日間かけて育てていくのもいい
どす黒くなった大根をはふはふ食べている時は
白寿の話を聴いているようだ

仕込んだ味噌などは
1年 通して移り変わる季節の「常温」が調理してくれるだろう




午から子へのプロセス

退気こそ生命の源に還る静かな時間なのだ


Drawing by seaside. November 2023



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