映画《イン トゥ ザ ワイルド》を算命学視点で語る


INTO THE WILD (2007)

1990年初頭に、北米を横断してアラスカの荒野にたどり着き、そこで死を遂げた青年の実話に基づくロードムービー。監督はショーン・ペン
1996年、アメリカのジャーナリストであるジョン・クラカワーの『荒野へ』を改作した作品である。



これ数年前に友人に勧められてその後、何度かTSUTAYAでレンタルした。それから数年経ち、改めて算命学視点でもう一度見たくてレンタルした。というのは、主人公が「宿命中殺」もちの予感しかしないのだ。いや、教科書で宿命中殺を学んでいるときに、この主人公クリスのことが頭によぎった。

主人公の名前はクリストファー・マッキャンドレス。略称「クリス」。1968年、彼は裕福な家庭に長男として生まれた。妹が一人いて、この映画では妹が兄と家族にまつわる回想の語り手として登場している。

ムービーは、1990年クリスが大学を卒業する日から始まる。卒業式の後、両親と妹とレストランで食事をする。(おそらく大学入学時に与えられた)お馴染みの車で、妹とレストランに現れるクリス。食事中に「あのジャンク車を捨てろ」と父親に言われる。両親は卒業を期に新車をプレゼントする予定だったのだ。その他にも、両親は頭脳明晰な彼が今後ハーバード大のロースクールへ進学することを望み「学費を援助する」と言うたり。

クリス「???」「 ジャンク?何が?」

兄の心情を幼い頃から共有している妹は気まずそうにご飯を食べる。

 「新しい車?なぜ必要なんだ? まだよく走るのに。近所の目を気にしているわけ?」

「気は確か?あれは最高の車だ。新しい車なんて欲していない」

「何も欲しくないよ。」

「物ばかり things..things..things..things…」


クリスは物質や名声を重要視する相変わらずの親への苛立ちがリーチに達しているのが見てわかる。家庭は裕福でお金には困らない。しかし両親仲は悪く、幼い頃から暴力や偽りの家庭の姿に心が傷ついていた彼と妹。

彼の中では大学卒業をひとつのゴールだと最初から決めていたんだ。


大学卒業 = 親・物質世界・社会 (People, Things, Society) からの脱皮

その日、既に銀行に立ち寄っていた彼は残りの学費 2万4千ドルを慈善団体に寄付し、親の写真も自分を証明するカードたちもハサミを入れて捨ててしまう。


そして 1990年から、アラスカで死亡する1992年の夏の終わりまでの放浪の記録が始まる。
彼が放浪の目的地として強く望んだのがアラスカ。



寅卯天中殺と生月中殺


クリス・マッキャンドレス は寅卯天中殺。そして宿命の月干支に 寅 をもつ生月中殺でもある。

生月中殺は、社会現象・家系の流れにおける自分の立場・現実に即した自分の心のあり方 の世界が 虚=不自然になっているということ。大学卒業という、若年期から壮年期への転換期、つまり更に進学を希望しなければ親の庇護の下にいた学生生活から社会へ飛び出す時期。そこで待ち受ける、「社会 society」をそのまま甘受しないのが生月中殺ならではの在り方。クリスは成績優秀・頭脳明晰であるから社会にでてからも(自分の想いとは別に)エリートコースを歩むことも実力から言えば可能。作中でも、旅の果てに髭をはやして小汚いクリスが、夜の街に輝くレストランを覗き そこで品行方正に同僚と食事をしているエリートの姿を自分の姿に置き換えているシーンがある。お前にはこういう煌びやかな人生もあったのよ、と言いたげにヒゲもなくスーツを身に纏った自分が髭面の自分を指さす。クリスはそのコースを選ばなかった。だからクリスなのだ。現実に即した自分の心のあり方が虚なのだから、当然世間一般とは違うものの考え方になる。

かつ寅卯天中殺で、仕事・友人・母親 / 守備 の世界である東方 が虚になっているので、クリスにとって「社会でキャリアを積んでいく」ような正規ルートも「親が遺してくれたものを守る」選択肢も苦だろう。

妹は学生時代の兄を「たとえ孤独な人生になろうとも、本の主人公たちを «友»とした 」と解説している。寅卯天中殺が行き着く西方は《暗》。東方の友人とか仕事だとか華やかな世界が不自然になってそこに不満が募りやすい。だから休息を意味する西方に傾斜する。彼の愛読書が、森という孤独の中で開拓と生活実験をしていたソロー『walden』なんだから。やはり孤独の中で自分を高めていくやり方に傾倒していたということ。



正気半会 ( 歯止めがきかない理想主義者 )

クリスの陰占をみると命式に申と子で「正気半会」が成立している。半会は現実行為にスケールの大きさや拡がりが加わり、発想の仕方も常識や社会通念を超えるものとなりやすい。
半会の組み合わせは下記。

申 – 子  子 – 辰  辰 – 申 (水)
亥 – 卯  卯 – 未  未 – 亥 (木)
寅 – 午  午 – 戌  戌 – 寅 (火)
巳 – 酉  酉 – 丑  丑 – 巳 (金)

この組み合わせのうち土性を含まないものを「正気半会」といい、

申 – 子  亥 – 卯  寅 – 午  巳 – 酉

の4種の組み合わせ。
土はものごとをまとめる質であり引力。それの欠如ということは、
現実行為や発想・思考の拡がりにブレーキがない帰結するところがない。引力がないから地に足がつかない現実離れをする。むしろ物事をまとめる必要もなく、時間という枠も超えて、自由自在に発想するという特徴になってくる。その善悪は別として。


常人離れしているということは、孤独であるということ。



放浪と野生への憧憬 × 行動力

クリスの場合、若年期に焦点を当てて陽占をみると北方に車騎星、東方に車騎星、そして天貴星ときている。さきほどの半会による浮世離れしたスケールの大きい思考に加え、車騎×2 という行動力が加わり、それを実現させてしまう力になる。車騎星は人生の目標となる人物が欲しいし、天貴星も親や先生の言うことを素直に吸収する。だから、ソロージャック・ロンドン を心の師として、そして崇拝する彼らの言葉を自由自在に引用し、大学在学中もずっとずっと彼の中で「放浪したい」「野生でありたい」という欲を静かに蓄積させていたのかもしれない。
(わたしも車騎星もっているから、この崇拝性がよくわかる。わかりすぎる。)

そして金性は増えれば増えるほど金生水、と水性を帯びてくる。
水性は学びと放浪だ。

そしてキャリアを捨てた旅を始めたのが1990年。彼の年運は龍高星。
龍高星は、まさに放浪、改良改革、体験型学習の星。
や、もう放浪するしかないでしょ。力と熱を帯びてる若者だもの!


農場で働いているときに酒場で酔っぱらった彼は雇い主に力説する。

ひたすら北へ行くんだ。ただ、自分の力で。
時計も地図も、オノもなし。何にも頼りたくない。
真っ只中で生きるんだ。そびえる山 河 空 獣
病んだ社会や人々からの脱出......
理解できないよ。批判や支配...
もうウンザリだ


人々というのはつまり 両親、偽善者、政治家 のことだそう。
映画といえども、もう生月中殺の若者らしい発言。
People, Things, Society (=生月) から脱出したい。自分の立場(キャリア)すら放棄して。

クリス・マッキャンドレスの人生の役目と死後


とかく「北」「アラスカ」に強い執着を示す彼に執着を示すわたし。
彼の日干支は《壬子》。
壬も子も北方だし、天干方位も北方。極端に北方(知)に傾いている。
そして地支方位は天軸。すると《壬子》の人生の役目はこうだ。

人生の役目 心の次元を大自然のレベルにまで引き上げていくこと
その手段 無形精神による (名声・金銭を求めない)
発揮場所 心の中
その行為 北方水性。物事を学び、改良改革、放浪することによる。



彼の日・月・年のうち、2つの干支が、地支方位は天軸。つまり、やはり「心を練り上げていくこと」が主な人生の役目になっていて、彼はもう若いうちからそれに気づき、そのような方向を試みている。彼は、孤独の中で《密》な生を歩んだに違いない。24歳で命が終わろうとも。

小説、映画、ドキュメンタリーになって彼の冒険は美化されているが

一方、過酷なアラスカの大地で、サバイバル経験や準備蓄積が十分だったといえない青年が生き残るには無謀だったという声もある。

実は、滞在して2ヶ月くらい経ち文明に戻ろうとしたけれど、季節は夏になり氷河からの流水でテクラニカ川は膨れ上がり、足止めをくらった。そしてその後、中毒による体調不良で餓死している(と言われているが真実は中毒かわからない)。



環境を無視した理想主義。


去年2020年6月に、彼がアラスカ滞在で拠点にしていた Magic Bus が政府と陸軍により撤去された。このバスにたどり着こうとクリスの旅の聖地を辿り、テクラニカ川で亡くなったものが2名、救助を必要としたものは15名にものぼったことによりとられた措置だという。

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